刹那が部屋に入った時、それはすでにその中にいた。それというのは少女であり、少女ではなく、そもそも人間ではないものだ。ベッドサイドに浅く腰掛けたそれは、足をぷらぷらさせながら退屈そうにして刹那の到着を待っていた。彼はそれとしばらく見つめあった後、半ば呆れたようにして口を開く。
「…何をしているティエリア」
「君を待っていたんだよ」
「…質問をかえる。何でそんな格好をしているんだ」
それ―――つまりティエリア・アーデ―――が得意げにカーブを描いた口元からは、ふふん、という鼻歌じみた声が今にも飛び出そうだった。ティエリアは立ち上がると、スカートの裾を持って微笑んでみせる。見せびらかすようにして裾をひらひらさせると、やはり微笑んだまま続けた。
「懐かしいだろう。要人警護の仮想ミッション時に僕が使っていた擬似人格だ」
# ハイスクールの美少女転校生