その唇を首筋によせ、れろりとそこをなめあげる。汗ですでに濡れた首筋は、少しだけ塩辛い味がした。身体をよせあうと、じんわりと湿ったふたりの個体がなじみあうようにして重なる。のぼせて、いまにも倒れてしまいそうな少女の額にくっついた前髪をかきあげて、その清らかなかたちをした頭部を撫でていった。
「でも、つけないと、」
「つけないと?」
「あつすぎて、とけて、死んでしまう」
# 八月、夏祭りの日 17:30 彼女のマンション - なぎこ
誘われて、吸い寄せられるように舌を差し入れると、ふたつの体温はすぐに絡まって溶け合おうとする。眩暈のしそうなほどの熱に思考を掬われながらも、自分のからだの奥からとめどなく溢れだしてくるものに気付いて、ティエリアはやはりそれをひどくおそろしく思うのだった。底のない沼に手足を絡め取られて、どんどん沈んでその中へと埋もれてゆくみたいだ、と思う。声をあげることも呼吸もできない、なす術もなくそのままどこまでも押し流されてゆくおそろしさ。
# 十二月、終業式の日 13:45 図書準備室 - 浜田